プロキシアクセスを求めたNY市年金基金のボード・アカウンタビリティ・プロジェクト

4月4日付の日経新聞の「フェイスブック機関投資家、会長の辞任求める」という記事に出てきたニューヨーク市年金基金(NYC Pension FUnd)は米国企業に積極的にエンゲージメントする公的年金だ。NYC年金ファンドは、NYCの各公務員年金の資産を一括して運用する基金でスコット ストリンガー財務長官が管理している。AUMはUS$175Billion(18.5約兆円)とState並みの大きさがあり、ESG投資にも熱心な年金基金だ。

2014年にはボード・アカウンタビリティ・プロジェクトと銘打って、米国の主要企業にプロキシアクセスを求める株主提案を行い、多くの大企業がプロキシアクセスを認める定款変更を行った。現在ではS&P500企業の6割にプロキシアクセスが入っているという。

一般的にプロキシアクセスとは、株主の権利強化によるガバナンス強化策のことである。
プロキシとは日本でいえば株主総会招集通知のことを指し、そこには取締役の候補が載っており株主総会で株主が取締役として選任する。取締役は株主に成り代わって経営監督を行う。というのがガバナンスシステムだが、実際には取締役候補は株主が決めたのではなく、取締役会にある指名委員会が決め、ときには経営陣も関与する。株主が自らに成り代わって監視してくれる代表を取締役として指名しているというのはイリュージョンにすぎない。本来の姿通りの取締役がいてもいいじゃないか、株主が取締役候補を送り込む形を実現しようというのがプロキシアクセスだ。

米国においては、3%以上3年以上保有している主要株主は、25%を超えない範囲で独自の取締役候補をあげる(招集通知に載せる)ことができるという株主の権利を指している。

日本では株主提案で取締役選任を提案できるが、米国では株主提案は経営に関することは認められていないので、取締役選任を議題にすることはできない。ん?プロキシアクセスを求める株主提案はできたのか?

話は長くなるのだが、金融危機がおこり、オバマ政権によりウォールストリート規制(ドッドフランク法)が成立、法律の中でSECにガバナンス強化の規制を入れることが認められたのだが、SECの新しい規制はラウンドテーブル(米国の経団連)に抵抗され、最高裁で否定されてしまいSEC規制は日の目を見ないことになってしまった。なんでこうなるのかは、また話が長くなるのだが、米国はフェデラリズムといういわゆる合衆国制なので50のStates(国)の政府と連邦政府が並び立つフェデラリズムを採用しているため会社法は各国が持っているため、全企業に規制するのはSECの上場規制しかないのである。
話を戻すとSECは上場規制改正は断念したのだが、上で株主提案は経営に関することは認められないと書いたが、実務的には企業側が不適切な株主提案を受け取ったときは、個別議案についてSECのNAL(Non Action Letter)をもらうことをして株主提案を招集通知に載せないということをしていたので、SECはある日プロキシアクセスを求める株主提案にNALを出さなかったのだ。これにより、機関投資家はプロキシアクセスの株主提案が可能になったことを知り、NYCのボードアカウンタビリティプロジェクトに繋がるのである。

さすが大規模公的年金基金とあって実に75社に株主提案を行い、2/3において過半数の賛成を得るという画期的すぎる結果となった。(株主提案オタクでも数をこなすのは大変だそうだ)株主提案自体は参考議決であり拘束力はないが、主にS&P500企業といった大企業を中心に、プロキシアクセスを認める定款変更が行われた。因みに、実際に株主の推す取締役候補が載った例はない(伝家の宝刀は抜かれていない)

加えてプロキシアクセスはアクティビストが仕掛けるプロキシコンテストとは違うので注意しよう。

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