気候変動のステータスチェック

ESGインテグレーションとは、ESG要因のリスクと機会を分析し投資の意思決定に反映させることをいい、なぜESG要因をインテグレートするかといえば、より良い投資判断ができるからである。簡単にいうとESGでより儲けようとする投資のことをESGインテグレーションといっている。

ESGインテグレーションにおいては、マテリアルなESG課題に関心がある。マテリアルとは企業価値に影響するという意味だ。投資が考慮するのは企業価値に関係するESG課題のみである。株式投資で考えると、株式市場全体でマテリアルな課題、業種(セクター)固有のマテリアルな課題、各々企業に個別にマテリアルな課題がありうる。

「気候変動」は、どのレベルにおいてもマテリアルと認識されている(されなければならない)ESG課題である。しかし「気候変動」の投資判断へのインテグレーションは容易ではない。そこで、気候変動のマテリアリティを考えてみたいのだが、その前に本稿では「気候変動」のステータスチェックを行っておく。

気候変動の科学

【事実】産業革命以降、地球の平均気温は上昇している。

【ほぼ事実】平均気温上昇の原因は、産業革命以降の人的な温暖化ガス排出である。

【上記から普通に導かれる予想】
このまま温暖化ガス排出を続ければ、平均気温は上昇を続けるだろう。
温暖化ガス排出量をカーブアウトすれば、将来の平均気温上昇を緩和できるだろう。

【かなり大胆な(アートな)シミュレーションの結果】
このままほっとくと2100年時点の平均気温上昇は6℃以上になるかもしれない。この場合はグローバルの多くの地域で、町ごと水没するなど生活がかなり困難が予想される。
温暖化ガス排出削減に取り組んだ場合、2050年くらいにグローバルの温暖化ガス排出をゼロにできれば、2100年時点の平均気温上昇は2℃くらいで収まるかもしれない。この場合は、温暖化の影響は適応可能なくらいで済むだろう。(最近は、適応可能なのは1.5℃レベルという説もある)

【未検証】
地球が人的要因によって温暖化していることと異常気象、巨大ハリケーンや洪水、干ばつなど災害が多発することとの関係ははっきりしない。
産業革命後すなわち人的原因温暖化が開始してから、異常気象や災害は増えていないという指摘もある。各地域限定でみたとき、やはり温暖化の影響が疑われるケースは印象としては多そうだが、科学的(統計的)には一般的な傾向とは認定できない可能性が高い。また、平均気温の上昇を2℃に抑えたからといって、局所的な気候変動やそれに伴う災害の多発を緩和できるとは限らないということもある。(防止よりは適応で対応することになる)

気候変動の政治
1988年にジェイムズハンセン博士が米国上院で「99%の確信度で地球は温暖化しており、その原因は人類が排出する二酸化炭素など温暖化効果ガスだ」と証言した。この日のDCは大変暑かったので、ははあ温暖化のせいだと人々は納得したものであった。

1992年にリオで開かれた地球サミットで「気候変動に関する国際連合枠組条約」(United Nations Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)が採択され、1994年に発効、温暖化防止が国際社会が一致して取り組む課題となった。

1997年京都で開かれた第3回締約国会議(COP)で先進国の温暖化ガス削減目標、Clean Development Mechanism や Emission Tradingなどを取り決めた京都議定書が採択された。これを基に欧州の排出権取引が開始され、環境ファンド中には排出権を保有するところもあったが、米国を始め先進国でも脱退国がでたことや、経済成長に伴って温暖化ガス排出の主役となる中国やインドが含まれていないなど問題点も多かった。最初の目標の期間が2012年までだったが、その後の合意はなく、排出権取引も法的な後ろ盾を失い、現在ではほとんと機能していない。

2015年にようやく次の法的枠組みとしてCOP21でパリ合意が採択された。90年代と違って今やBRICsが主役ということもあって、先進国や新興国などの区別はなく、一律の削減とはなったものの、各国が自主目標(NDC)を設定し、未達への罰則もなしという緩い合意となっている。ちなみに、この自主目標で努力しようというのは日本の提案で、合意に貢献したと考えられ、そのおかげもあって、米中も入り世界で全員参加が実現した。(が、米国は離脱予定ではある)ただし、緩すぎる合意のために全体で温暖化ガス排出量を削減できるのか実効性の問題がある。各国のNDCを達成しても、パリ合意の2℃は達成できないのだ。

パリ合意は2℃だけをキメたわけではない。温暖化ガス排出削減は、エネルギー源をどこに求めるかというエネルギー安全保障と一体であり、化石燃料の比率を減らし、再生可能エネルギーや蓄電、省エネ、CO2貯留などの技術革新が必要とされる。Sustainable Developmentとは、温暖化を防止しながら、経済成長を果たすという意味であり、主に途上国において一人あたりエネルギー消費量を増やしながら、温暖化ガス排出は減らすという、なかなか困難なことを実現しなければならない。先立つものはマネーだ。パリで合意したものはグリーンファンド、すなわち先進国の途上国支援の枠組みだ。気候変動は、先進国にとっては援助資金のファンディングの問題であり、途上国にとっては支援を引き出すレバレッジである。米国の離脱は、CO2削減でなくこっちでイタイ話である。

主役の変更。米国から中国へ。(気候変動にとどまらないかもしれないが)
国ごとの温暖化ガス排出状況をみると、90年代では米国の排出量がダントツに大きく、カリフォルニア州だけでもすでに1位になるくらい他国との差があった。このときに京都議定書に米国が参加しないというのは決定的であった。しかし、2030年あたりに中国のGDPが米国のそれを上回る予想があるように、今や中国の温暖化ガス排出がダントツ化すると予想されており、世界の温暖化ガス排出が削減できるかどうかは中国次第である。欧州や日本がとことん排出量ゼロになっても、経済成長する中国が原単位削減では、グローバル全体では増えてしまう。もちろんだからといってパリ合意をやらなくていいということではないが、実効性を考えたとき欧州や日本は、自国だけでなくお節介を焼いて中国や他国の面倒をみた方がよいということになる。Think Globallyだ。

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