GPFG(ノルウェー年金)、最大級の石油ガス不投資へ

ノルウェー年金とは
正式名称は、Goverment Pension Fund Global (GPFG)で、名前にPension(年金)が入っているが、年金基金ではなく、ノルウェー政府のソブリンウェルスファンド(SWF)である。社会インフラも福祉もほぼ完ぺきなノルウェーでは、北海油田の上がりを次世代のために積んでいる。(日本では負債を次世代に残しているがノルウェーは資産を残す)その政府が貯めたお金をグローバルに投資するのがGPFGで、運用資産残高は約100兆円。

財務大臣がオーナーーであり、運用はNorges Asset Management、ノルウェー中央銀行のアセマネ部門が行う。ポリシーミックスは株式7割、債券3割、若干不動産を持つが株式はすべて上場企業のみPEなし。オルタナティブもなし。保有銘柄は9000銘柄超、株式のうち、パッシブ、エンハンスド、アクティブで3等分。日本株式でいえば、MSCI World以上の銘柄を持っている。中小型にも投資しており、投資ロットが大きいため、中小型銘柄ではトップホールディングスになっていることもある。

ESG投資業界では、昔から派手なダイベストメントで知られ、「労働者の扱いがなってない」ウォルマート株を1日で売却した伝説がある。最近ではエンゲージメントも行うものの、タバコや武器製造の不投資に加えて、気候変動に関連するダイベストメントも行うため、かなり長い不投資企業リストを公表している。最近では、石炭採掘に加えて石炭発電も不投資の対象となり、石炭発電量が多い日本の電力会社もダイベストされている。

年金基金のようないわゆるフィディシュアリ(受託者責任)の投資家ではないため、不投資も自由に行う。ひとつはCouncil on Ethicsという政府の組織が、ノルウェー政府として投資するのに相応しくない企業や業種に対して不投資を行うように勧告がある。これは、天の声なので、有無をいわさない不投資となる。「タバコ」などの例。次の段階として、Norgesがアセマネとして、保有銘柄のメンテナンスを行う。投資判断としての不投資なので、リターンへの懸念が主にになる。また、エンゲージメントもNorgesの仕事である。

今回の石油ガス不投資
正確には石油ガスの採掘精製セクター。FTSE RussellのSector:0001 Oil & GasのうちのSubsector: 0533 Exploration & Productionを持たないという決定で、現状、保有している150銘柄について徐々に売却をすすめるというものである。対象150銘柄の合計保有額は推定8,000億円。ちなみに英国のShell、BP、仏Totalはこのsubsectorには含まれない。日本企業では、富士石油、出光、東亜石油、INPEXが含まれる。

0533フェーズアウトの理由は、石油価格の中長期的下落リスクへの対応だという。そもそもは2017年にNorgesから財務大臣宛てに、石油ガスセクターをGPFGのベンチマークから外すよう提案されていた件について、財務大臣の諮問有識者グループは、GPFGのポートフォリオにエネルギーセクターを残すべきとの結論を出した。Norgesは、継続的な石油価格の下落が、GPFGの運用に与える影響を懸念しているが、有識者グループはその影響は限定的とした。しかし、パブリックコメントでもエネルギーセクターへの不投資の要請強く、最終的には、広くエネルギーセクターの不投資ではなく、0533に絞り込んだ形の不投資となったようだ。

元々、GPFG自体が、北海油田の石油を売ったお金なので、石油価格の永続的な下落は、キャッシュインフローに影響を及ぼす。さらに、石油ガス会社に投資することによって、再度石油価格の下落リスクをとることになる、というのが問題意識であり、投資先を分散させることによって、リスクを軽減できるという考え方だ。これは、企業年金が自社の株式やセクターに投資しない方が良いという考えにちょっと似ている。
とはいえ、石油ガスセクター全部まとめてダイベストメントではなく、サブセクターレベルの限定的なダイベストメントで、方針は出したもののいつまでとも言っておらず、慎重な言い回しに終始している。

表向きGPGFは石油価格リスクへの対応としているが、もちろん、エネルギーセクターに関するダイベストメントが気候変動と無関係ということはない。本音は気候変動へのアクション、すなわち化石燃料ダイベストメントとして、周囲は受け止めているだろう。石油ガスセクターごとのダイベストメントでないが、金額的には史上最大で話題性は十分だ。一方、フェーズアウトしたらエンゲージメントできんじゃん、とESG投資家からはツッコミもありそうで評価は分かれるところだ。

ポートフォリオ運用上どうかといえば、9000銘柄のうちとはいえ150銘柄、8000億円のダイベストメントの分散投資への影響は少なくはないと思われる。一方、GPGFが主張する原油価格リスクのエクスポージャーの調整として十分かといえば、んーよくわかんない、という感じだ。

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