ああ日産

ゴーン氏を東京地検特捜部に渡した後、日産はガバナンス強化を図って、業績不振でもマネジメントは西川社長CEO体制のまま、主要株主であるルノーとのアライアンスはそのままで経営統合はなしで、株主総会を乗り切るつもりのようだ。

ガバナンスの強化とは、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に変更するというもの。指名委員会等設置会社は、監査、指名、報酬委員会、いわゆる3委員会を備える、アングロサクソン標準の取締役会を持ち、CEOの経営をモニタリングする。

取締役候補は11名、7名の社外取締役と親会社ルノーのCEOと会長、日産の社長CEOとCOOという構成だ。この候補を選んだときは日産は指名委員会を持っていないので、候補セレクションのプロセスはいつもの日本企業のやり方、つまり日産のマネジメント、西川CEOあるいは忖度した経営企画部マンが、コンサルに助けてもらいながら都合の良い人を選んだ、ということだろう。(コンサルの出来不出来という側面もある)

しかし、日産の株主構成はザ日本企業とは様子が異なる。
日産の株主構成は、日経会社情報によるとルノー43.4%、外国人18.6%、金融機関16.8%、個人16.1%、法人2.0%である。
ルノーは過半数はないが、拒否権はある。日本の会社法によると25%以上持っていると実質支配しているとみなされるらしい。日産はルノーの上場子会社なのである。
ルノー以外の株主、つまり少数株主の内機関投資家は、外人18.6%、国内機関投資家16.8%、合わせて34.4%だ。
法人、つまり事業法人の政策保有株は2.0%であり、ゴーン氏によって持ち合いは解消されている。自動車会社にありがちな株式持合いは日産にはほとんどない。ルノー以外は株主は、外人、機関投資家、個人に分散している。そして、その上場子会社の少数株主は、親会社ルノーにやられる、割を食う立場にあるが、それを承知の上で株主となっている。

最近のニュースによれば、ルノーが委員会設置会社への移行のための定款変更議案に賛成しないと言い出したようだ。ルノーの株式保有比率は43.4%なので、ルノーが棄権した場合、2/3の賛成が必要となる定款変更は可決できない。新聞記事などでは「ガバナンス強化に反対する」ルノーはけしからんみたいな論調が多いが、日産はルノーの子会社であって、ルノーに実質的にコントロールされている会社なので、ではどうやってコントロールするかといえばそりゃ取締役会をコントロールするわけで、当たり前のことをしてるにすぎない。委員会は、総会で選任されたあと取締役会で委員は選出される。社外取締役も日産の身内となれば、ルノーとしてみれば、経営統合阻止シフトが敷かれるとみたのだろう。そもそも委員会委員会を設置して、執行と経営を分離して、ガバナンスが効くのは株主が分散されていて支配株主がいない会社が前提で、日産のような子会社には通用しない。ガバナンス強化で、支配株主ルノーの影響を減じることはできない。むしろ、ルノーのコントロールがよく効くようになる方向だ。

一方、プロキシアドバイザーのISSとGlass Lewisは、西川社長CEOの取締役選任に反対推奨を出している。ゴーン氏の側近だった西川社長CEOが、ゴーン氏の不正の数々に無関係というのはムリがある。西川氏については、反対推奨は正論だ。だいたい今まで気が付かなかった、内部通報があって調べてみたらあらびっくり、としたらCEOとしての能力はないと言っているようなものだ。しかし、内外機関投資家がこぞって反対しても、ルノーが賛成すれば議案は通るだろう。ルノーとしては、交渉相手として西川氏が都合がよければ反対しないだろう。ここでも少数株主はボイスを持たない。それは「ガバナンスを強化」しても、変わらない。

では、少数株主の権利が護られる(ガバナンスが効く)状態はどういうときか、といえば、それはルノーと日産が経営統合して、持株会社にぶら下がり、日産株を持株会社の株式に交換したときだったりする。日産の少数株主は持株会社の株主となり、ルノーにリップオフされることもなくなるし、日産のマネジメントのモニタリングは持株会社の取締役会が機能する。持株会社のボードは、日産の利益はルノーの利益につけかえてといったインセンティブはない。株式の持ち合いによる業務提携といういびつなものをやめて、経営統合してしまうのが、アングロ・サクソン的スッキリ解決法なのである。

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