DOL(米国労働省)、ESG投資に塩対応?

DOLはESG投資に関するFAB(Field Assistance Bulletin) 2018を発表した。
ESG投資に関するFABは2015年、2016年にも出ているが、これらの補足として出されたものだが、
オバマ政権時に出たFAB2016とは、かなりトーンが異なるものとなっているとのこと
そこで、当該FABを読みに行ってみた。
https://www.dol.gov/agencies/ebsa/employers-and-advisers/guidance/field-assistance-bulletins/2018-01

最初にESG投資とDOLの関係だが、DOLは企業年金制度を所管しており、ご存知の通りERISA(エリサ法)は年金基金の受託者責任を定めている。ESG投資がERISA上の受託者責任に触れないかどうかについては、DOLが見解を出す。

米国でSRIが盛んになった90年代後半に、社会的な目的を持つ投資が年金基金の受託者責任(もっぱら受益者の便益のみを資産運用の目的とすること)に違反するのではないかという議論があった。(今もある)

SRIが、つまりESG要因を考慮することが年金基金の投資においてERISA上の受託者責任違反にならないことを示したのがいわゆるDOLのカルバートレター(1998)であり、「投資パフォーマンスが遜色ない(return compelling)のであれば、SRIは問題ない」との見解を示し、米国の企業年金基金のESG投資の道を開いた(とされる。)

ERISAがカバーするのは米国の企業年金基金だけであるが、DOLの解釈が広く世間で語られるESG投資の受託者責任問題の事実上の指針となっている。日本においてもGPIFがまだ年福だったころの理事が「ERISA違反だから企業年金基金はSRIはダメ」と年金情報に書いていた。もちろんERISAは日本の企業年金基金はカバーしてない。
ということで、DOLのESG投資に関するFABに注目する必要があるのである。

2016年のFABでは、かなり踏み込んだとの評価があったが、基本的にDOLの立ち位置は、Return Compellingから変わっていないと思う。
資産運用の受託者責任は受益者あるいは顧客のベストインタレストのために働くことだ。このベストインタレストは経済的なインタレストであって世直しの満足度といった善行(Doing goodとかGreater good)の価値は含まれていない、というのがDOLの見解である。

したがって、ESGを考慮することは、それが資産運用のパフォーマンスに寄与するときのみ正当化される。
カルバートレターではReturn compellingとされた。遜色ないというのは、同等以上というニュアンスで、より有利と思われるときはESG投資を選んでもいいととれる。世直しの分パフォーマンスそっちのけというのはダメよ、ということだ。

FAB2016では、同等ならESG投資を選べと取れる表現があった。少しでも良くなる可能性があるのならば、ESG投資をやらない手はないだろうと、幾分修辞的な表現ながら、ESG投資を主流(マジョリティ)と認定した、とESG業界では評価された。(私は幾分、意訳が入っているような気がしたが)

それでもって今回のFAB2018では、
ESGを考慮するのは厳に経済的なインタレストに資するときのみ、と明確化している。FAB2016と違って解釈の余地はない。ここでちょっと注意しておかなければならないのは、米国の企業年金の主流は401Kプラン、つまり確定拠出年金(DC)であることだ。DCにおいては加入者個人が資産配分やファンドを選ぶ。その際、個人の価値観を反映させた選択をするのは個人の自由である。DOLが言っているのは、ESGテーマ投資をラインナップに加えるのはよいが、その際既存のESGでないテーマ投資を外したりせず、それも選択肢として残せというものだ。ESG投資業界が望むESG入ってるものだけにしようというESGデフォルトにダメ出し。それに、ESGだったら何でもいいというわけにはいかないと言いたげだ。
さらに、議決権行使や株主提案、エンゲージメントは、受益者の経済的なインタレスト、つまり投資パフォーマンスに寄与する、しかもコスト勘案後で、というのがやっていい条件だとしている。年金基金や運用機関が受益者のコストのもと社会目的、Greater Goodのためにエンゲージメントすることは、濫用にあたる。あくまでも、ESG課題だろうが財務課題だろうが、企業価値に影響するものでなければならないとしている。

このDOL見解では
DBがスクリーニング投資をやるのは、基本的にクロだろう。
ESG準拠、いわゆるポジティブスクリーニングも現在のESGファクター?のレベルでは、グレーだろう。
一方、ESGのマテリアリティに確信のあるアクティブ運用(ESGインテグレーション)の立ち位置とは矛盾しない。
DCにおいて個人がESG投資を選べるように選択肢を置くのは問題ないが、ESG投資のみにして、ESG投資でない投資への選択肢がないのはダメ。
受託者責任投資家の議決権行使やエンゲージメントなど株主行動が必要というのはエイボンレター以来変わっていないが、企業価値向上や投資パフォーマンスと関係ない社会的目標達成(社会に注意喚起するとか認知をすすめるためも含まれる)のために使うのはダメ。さらにコスベネを言われると、パッシブのエンゲージメントは苦しい。企業分析していないのに、企業価値向上のエンゲージメントを探し当てられるのか不明だし、そのためにパッシブ銘柄のソーティングをするならそのコストは誰が負担するの、ということになる。だいたいエンゲージメントの効果を測るのはかなり難しいし、エンゲージメントはコストがかかる(人件費。)したがって、エンゲージメントに関するDOL見解はかなり厳しい。

ただ、実際にはFiduciaries(受託者責任のある機関投資家)のスクリーニングは広く行われているし、多くの公的年金基金が社会や環境の課題解決を主目的とするインパクト投資のプログラムに取り組んでいる。最近の運用機関のエンゲージメントチームはどんどん大きくなっている。

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