薄いルールブックを決めたCOP24

毎年この時期はCOP(Conference of the Parties)、気候変動枠組条約締約国会議が開かれる。今年はポーランドのKatowice(たぶんカトヴィツェと発音)で24回目のCOPが開かれた。

まずパリ協定について復習しておくと、2015年にパリで開かれたCOP21において
「産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑える。加えて、平均気温上昇「1.5度未満」を目指す」
と京都議定書以来18年ぶりに合意したのがパリ協定。196カ国の加盟国全員参加という初の快挙で、先進国も途上国も一律同じ枠組みで温暖化ガス排出削減に取り組む、ということが決まった。

で、今回のCOP24でパリ協定の実施に関するルールを決めないとパリ協定の2020年スタートに間に合わないというのが今回の課題。そう、パリ協定の具体的なルールは後回しだったのだ。その結果はというと、またまた徹夜の折衝を続け、ルールブックの大枠に関する合意採択にこぎつけた。ぎりぎりこの大掛かりなインターナショナルな交渉の場での失敗は回避された。

ここまでがだいたい日本語のメディアのカバレッジ。英語でググると、もう少しCOP24の様子がわかる。

石炭がフューチャー
最初に、ポーランドがCOPの開催地に選んだのがKatowice、炭鉱の町。さらにクラウン企業のコークス製造会社がスポンサーになっていた。石炭発電が主力電源となっている主催国ポーランドは石炭産業が気候変動問題に加わる余地を主張しているのだ。一方、独仏などEU先進国やIMFは2030年までに石炭発電をフェーズアウトするとしており、年金基金など欧州の機関投資家の石炭ダイベストはこれに歩調を合わせている。石炭フリーへ向かうなら、途上国の石炭産業のトランジションの面倒を見る必要があるというのがポーランドの開催地選択のメッセージなのだ。アジェンダにあった”Just Transition(公正な移行)”とはこういうことだ。石炭ダイベスト派はグリーン雇用を強調する。しかし、ポーランドの炭鉱労働者達に開かれているのだろうか。

石炭発電をベース電源に位置付けている日本は、途上国へクリーン石炭火力を積極的に売っている。(COP24でどういう主張をしたのかはわからないが)石炭発電をクリーンにして低炭素社会に残す、つまりクリーンエネルギー化する技術の開発、貯留技術とのセットアップなどで石炭発電をグローバルのエネルギーミックスに残すという戦略ではないかと思われる。本邦の機関投資家の中には海外の年金基金やSWFに倣って石炭ダイベストを掲げるところがあるようだが、素朴な疑問として国家戦略とのアライメントがなくてよいのだろうか?GPIFも一介の運用機関に気候変動対応を任せてしまうのも酷な話だ。英国には気候変動大臣がいるし、ノルウェー年金SFWはノルウェー国家の持ち物だから、国の気候変動戦略とSWFの石炭ダイベストと一心同体だ。

Money Matters
次にお金の問題。我々ファイナンス業界でなくても、世の中すべて先立つものはお金。パリ協定は先進国、途上国の区別なく一律のルールで温暖化ガス削減に取り組む。(ここ強調されるのは、過去京都議定書では先進国だけのオブリゲーションだったから)とすれば、途上国には先進国のような資金も技術もないから、先進国が支援する必要がある。それに、そもそも産業革命後、今まで温暖化ガスを排出して温暖化の原因を作ったのは先進国だ。そこで、Green Climate Fund、途上国への気候変動対策の資金援助が立ち上がった。2009年に総額103億ドル(内、日本は15億ドル)の拠出表明があったが、毎年1000億ドルが目標となっている。さらに最近のWorld Bankの見積もりでは、向こう5年のターゲットは毎年2000億ドルだという。ひえ、全然足りないぞ、というのが国際機関や途上国サイドの不満だが、金ヅルだった米国の脱退で、Green Climate Fundへの金の集まりに暗雲が立ち込めている。とまあ、途上国にとっては気候変動とは 開発援助(ODA)の枠組みなのだ。金欠の先進国は民間資金の活用=Green Financeという呪文を唱えている。世の中の金融緩和で水ぶくれしている金融資産は投資先枯渇状態でリターン低下が悩ましい。Green Financeは低パフォーマンスの大義名分となるかもだが、民間マネーはそう容易には途上国へ流れない。

Carbon Pricingはスルー
スウェーデンはノーベル経済学賞をカーボン税にあげたが、COP24ではまったくスルーとなった。たぶん投資家は経済学者の次にカーボンプライシング(カーボン税あるいはカーボントレーディング)の支持者だと思うが、政治の世界では人気がない。スルーだったので書くこともない。

国連もこの薄い合意を予見していたので、来年9月にルールブックの詳細を詰める会議を設定している。逆にこの根回しがあったので、COP24ではあまりがんばって詳細詰めなくてもという雰囲気があったという人もいた。NDC(各国の自主目標)を足し合わせても2度までにとどまらないようなので、NDCの積み増しも必要なのだが、それも9月に持ち寄る予定のようだ。まあ、この先送りモードでは、パリ合意の実効性にあまり期待をしちゃいかんということなんでしょう。

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