スタバのアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修

スターバックスは5月29日の午後、全米8000店を臨時休業とし、全従業員に対して人種差別に関するアンコンシャスバイアスのトレーニングを行った。

ことの起こりは、フィラデルフィアのスタバで待ち合わせをしていた起業を目指す黒人の若者2人が、注文もせず店内にいたため逮捕されたというもの。この2人は、人と会う約束があってスタバの店で待っていたのだが、スタバの従業員は、注文もせずトイレを借りようとする2人に退店を要求、彼らが断ると警察に通報した。駆けつけた警官が2人を逮捕、後ろ手に手錠をかけて連行する映像は黒人に対する人種差別の象徴となった。彼らが、起業家の白人男性2人だったら、スタバの従業員は警察に通報しただろうか?通報する前に、ミーティング相手(白人の経営者)が登場していたら、警察に通報しただろうか?ということで、スタバというもはや都市文化を形成するカフェで起きた人種差別事件として、世間の批判と嘆きを引き起こしたのである。

すっかり有名人となった2人だが、スターバックスとこの2人とは示談が成立している。その支払い金額は明かされていないが、想像するに結構な額ではないかと思われる。また、2人に対して通信大学の授業料免除やスタバのCEOが起業指南をするなど、様々な申し出をしている。さらに、全店を休業しての人種差別のトレーニングとなったわけだが、全従業員に対するトレーニングプラスこの休業による売上減という機会コストを負担することによって、スターバックスの人種差別撲滅へのコミットメントを示しているのだ。

まあ、スタバの戦略がいかにすばらしいか、あるいはスタバが良心のある企業かどうか、という議論はさておき

ESG的な読み解きとしては
人権問題はESGのS項目で、マテリアリティはレピュテーション、ブランディングというプロセスで発生しそうだ

しかし日本の投資家や企業からすれば、
「そんなの人種差別の激しいアメリカ特有の問題でしょ」
「ひでえ国だよな、自由平等といいながら、とことん人種差別な国だぜ」
と対岸の火事だろう

いや、そうでもない。
注目したいのはこのアンコンシャスバイアス・トレーニングという奴だ。
日本の企業がダイバーシティ経営に向かう(という覚悟ができた)場合には、ダイバーシティを社内に推進する上で、このトレーニングは欠かせないと思われるのだ。

日本の企業には、女性も外国人もあまり活躍していないが、サラリーマン男性の方々は
「自分たちは特段差別なんかしてない」
のに、女性が少ない、辞めちゃう、管理職適任の女性がいない、会議室がぜ〜んぶ日本人男性ばっかりで埋め尽くされていても
違和感なし
そこで、アンコンシャスバイアス・トレーニングの登場だ
あなたの心は差別だらけ、かもしれませんよ

ブラインド・オーディションはアンコンシャスバイアスがあることを見事に示した例だ。
オーケストラの新規入団オーディションでは、当然、楽器の演奏の実力で判断されているとされる。
しかし、外見がわからないようにして純粋に音だけでオーディションをしたところ
女性の合格者が明らかに増えた
これはどういうことか?
演奏を見ながら審判すると、故意に男性を選んでいたわけではないが、知らず知らずに男性にフェイバーな判断になっていた

「指導的立場」への昇進についても、人のお世話やサポートが期待される女性としてあるべき(とされる)理想の女性には似つかわしくないポジションということになり、女性は選ばれにくいとされる

思い出すのは、ボストンコモンIMが話してくれたバングラディッシュのラナプラザビル倒壊事故を契機としたESG投資家のエンゲージメントのケースだ。
服飾産業に下請け縫製工場の安全性や労働環境の改善を求めたイニシアティブはファーストリテーリングも署名しているが、下請けの縫製工場をちゃんと監査するように求めているものだ。実際に、現地の工場を見にいったというボストンコモンのローレンは、ミシンを踏む女性の待遇改善もだが、それより、殴ったり怒鳴りつけたりする男性工場長を教育することが効果的であるということが行ってみてわかったそうだ。

女性活躍(活用)を目指す日本企業へのエンゲージメントとして
働くママの兼業支援(強化)策よりマネジメントのアンコンシャスバイアス・トレーニングを提案してはどうだろう

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