ブラックロック社は世界最大の運用機関(インベストメントマネージャー)だ。アクティブ運用のラインナップも揃えているが、世界最大に成らしめているのは合併した旧BGIのパッシブ運用のAUMである。
創業社長のフィンク社長は、数年前から米国の主要企業に向けたオープンレターという形で、機関投資家株主としてのメッセージを発信している。世界最大の機関投資家のトップの影響力を利用したこれもエンゲージメント活動の一種である。
今年のレターはウェブサイトに掲載されている。
Larry Fink’s Annual Letter to CEOs
A Sense of Purpose
https://www.blackrock.com/corporate/investor-relations/larry-fink-ceo-letter
素晴らしい内容で、誰も異論はないだろう。
メインストリームのインベストメントマネージャーのトップからこのような責任投資な話が聞けるようになったんだなあと感慨深いものがある
文章がお手本のように素晴らしいので、英語学習の教材としてもいい。
しかし味わって読むほど時間がない人もいるだろうし、このブログで済ましたい人のためにちょっと
簡単にポイントを挙げておくと
まず
パッシブ運用家としてエンゲージメントを強化する。ESG投資の会議などでおなじみのMs.EdkinsはManaging Directorだが(Head of ESGよりハイランクで担当者を置いている。)、さらにシニアレベルの共同創業者にして副会長のMs.Novickがoverseeして、さらに人も増やすと宣言している。
もちろん
長期的な価値創造 Long-term value creationについて語るのだが、(CEOではなく)取締役会が語れるようになれ、と言っており、
取締役会が投資家の対話の相手になれといっている。
議決権行使よりその前のエンゲージメントを重視する
取締役会のダイバーシティが必要
取締役会はサステナビリティやステークホルダーのことを考えて経営しなさい
ちょこっと解説しておくと、米国では投資家と会うのはたいていはCoporate Secretaryで、次にCFO。ブラックロックくらいになるとCEOが会うけど、ボードメンバー(つまり社外取締役)が出てくるケースはあまりないという。一方英国では、独立議長が対投資家スポークスマンとなるようで、ボードメンバーと機関投資家株主は近い。
さらに、株主提案が株主がメッセージを送る手段としては、米国では株主提案である。エンゲージメントは比較的newということもある。
もちろんダイバーシティ要素のトップはジェンダーである。ダイバーシティ要素の中で、ジェンダー強調もちょっと前までは躊躇されていた。再びジェンダーがセンターへ来た感がある。
そして、今年のハイライトは、ステークホルダーが求めるようにESGにボードが取り組むことが、長期的な企業成長に必要と言っているところだ。
このレターは米メディアでも取り上げられている。
MarketPlaceというAMPがやっているラジオ番組にフィンク社長が登場し、キャスターのKai Ryssdalは早速「サステナビリティに考慮するって、(営利追求の)資本主義はやめるってことですか?」と突っ込んでいた。フィンク社長は、「サステナビリティに配慮するのは長期的な企業価値向上のためであって、長期的な投資家にとって資本主義の原則に反しない。そして我々は長期的な投資家だ」と答えていた。