シェルの気候変動に関する株主提案

今や、風物詩のようになったシェルの株主提案だが、今年のシェルの株主総会でも気候変動に関する株主提案が出された。しかし、賛成票は5.54%しか得られず否決された。

シェルの株主提案のストーリーとは

シェルは本社はオランダだが、ロンドン証券市場(LSE)に上場しており、テムズ川をはさんで国会議事堂(ビッグベン)の斜め向かいにそびえ立つシェルのロンドン本社は、オイルメジャーであるシェルがLSEのトップ企業であることを示している。

ESG投資家にとって最もマテリアルな環境イシューといえば、それは気候変動である。そして、石油・ガスセクターこそ温暖化ガス排出のもととなる化石燃料の生産供給を行う気候変動問題のど真ん中セクターだ。
だから、ローカーボンファンドでは、石油・ガスセクターはアンダーウェイトされる可能性が高く、化石燃料フリーファンドでは、ダイベストとなる。温暖化ガスゼロ排出時代には、もはや油を燃やすことはできず、油田はもはや開発されることはないStranded Assets(座礁資産)という指摘も多く、オイルメジャーのバランスシートの資産も再評価が必要と指摘されている。

しかし、年金基金のような巨額の運用資産を持つ投資家は、分散された株式ポートフォリオを所有するので、LSE最大の時価総額であるシェルのアンダーウェイトやダイベストはポートフォリオ管理上あまり好ましくない。パッシブ運用なら尚更、売るわけにいかない。

で、この場合は、エンゲージメントだろう。但し、少数株主である機関投資家が口々に言ったところで、シェルが聞く耳を持つとは思えない。そこで、オープン形式の共同エンゲージメントのイニシアティブとして、気候変動に関する株主提案が提出された。

米国や日本と異なり、英国ではそんなに気軽に株主提案はできない。英国における株主提案は、時価総額の5%を所有しているか、100人の株主を集める必要があり、英国では滅多に株主提案を見ることはない。なので、機関投資家のエンゲージメントといえば、企業とのダイアローグ(対話)を指すが、2015年のAGMに、”Aiming for A”というイニシアティブの音頭で、株主100人集めて気候変動への対応を求める株主提案がシェル(このときはBPにも)に出された。世界中の投資家も賛成表明をし、果てはシェルの取締役会も賛成表明をして、この英国の珍しい株主提案は、実に97.22%の賛成を得た。メディアでも大きく取り上げられ、シェルは気候変動対応の戦略をたて、毎年見直していくこととなった。

翌年以降も、気候変動対応をテーマとした株主提案は毎年AGMに提出されている。
しかし、2015年の再来とはならず、2016年の賛成は2.78%,2017年は6.34%、そして今年2018年は5.54%だった。
今年の株主提案では、シェルが立てているNet Carbon Ambitionをさらに進めて、パリ合意の野心的目標に沿った目標とするように求めている。株主提案には100人必要だし、ロスチャイルドAMなどパリ合意のお膝元からは賛成表明もあったが、ISSやグラスルイスはそろって反対していた。理由は、自分の力ではどうしようもない(パリ合意に基づく目標設定)についてコミットするのは1企業として適切ではないという意見だ。運用機関も多くは態度を表明しておらず、賛成票はいれずらいものだったようだ。しかし、いくつかの投資家は、Absteinを表明しており、実際にも例年に増して棄権票が多かったことから、株主提案の書きっぷり次第では、また2015年の再現もあるかもしれないという希望を残したものになった。

ちなみに2015年の華々しい株主提案の圧倒的賛成多数による可決は、なぜ可能だったのか、運動に協力したShareActionに聞いたところ、なんといってもシェルの取締役会が受け入れを表明していたことが大きいということだ。機関投資家も、取締役会がOKしているということで安心して賛成票が入れられたとのこと。

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