全体的に大義名分の多い会議だったが、TCFDについても、「これからの気候変動に関する情報開示はTCFD 」ということはアピールできたが、「TCFDってどうやるの」というアクションプラン(方法論)はよく見えないかった。したがって
気候変動情報開示はTCFDでやるけど、どうやるかは未定
というのが現況といえそうだ。
気候変動関連の情報開示といえば、CDP (カーボンディスクロージャープロジェクト)だろう。機関投資家は株式投資において、気候変動の問題を考慮すべきだといわれたとき、まずは企業の情報開示(ここでは温暖化ガス排出量の情報)が必要だということから始まった投資家イニシアチブで、毎年主要な企業に排出量情報の開示を求めている。今でどの ESG評価でも、排出量情報はCDPのScope 1、2の開示がディフォルトとなっている。
気候変動が経済活動にマテリアルだとしても、カーボン負荷が投資期間中に企業の業績に影響がでるかと言われれば、突然規制とか社会的なパニッシュが激辛になるとかくらいしか思いつかない。ここ数年はオイルガスセクターのStranded Assets (座礁資産)の再評価が盛んに指摘されたが、気候変動について何をカウントすべきか投資家は考え続けている。TCFDは、気候変動を金融セクターのシステミックリスクとして捉えて、「気候リスク」として理解、管理すべきという考えだ。(もちろん投資機会サイドもあるが、主としてリスクだろう) いつからそういう話になったのか?と思った人も多いかもしれない。このTCFDを金融安定理事会を設置したのは英国中銀総裁のリーダーシップで、マイケルブルンバーグがチェアとなり、ESG セレブリティが結集、TCFDが杭州G20でコミュニケで言及されるのではないかと、盛り上がっていたのは2016年のこと(されなかったが)。杭州G20といえば、グリーンファイナンス・レポートがGFSGから報告されたり(こちらはコミュニケ入り)と、サステナビリティが国際政治の場で俎上になりそうとESG業界は盛り上がったのだった。これは、中国が経済政策にサステナビリティを据えているからだが、その後のG20ではまた遠ざかっているようだ。
TCFD は全てのビジネスに気候リスクとその対応についての開示を求めておリ、気候リスクとは物理的なリスクと移行リスクだという。そのリスクのインパクトは過去ではなく将来的なものでなくてはならず、その計測にシナリオ分析を推奨している。つまり、今までの温暖化ガス排出量や座礁資産の評価といった実績値(過去値)ではなく、リスクマネジメントとしてルックフォワード(将来値)の開示を求めている。方法論を困難にしているのは、このシナリオ分析だ。これについてはまた別の記事でアップデートしようと思う。ここでは、この方法論についての新たな情報はあPRI in Person 2018では得られなかったと報告しておく。日本では経産省が年内にTCFDベースの情報開示ガイドラインを策定するといっていた。
ただし、気候変動情報開示については旧非財務としての情報開示のスタンダードを提供してきたGRIやCDPといったイニシアチブもどうやらTCFDの下に集結するようだし、PRIもendorseしているので(アセスメントレポートでもTCFDベースの開示を聞くだろう)表題のように、気候変動情報開示はこれからはTCFDベースということは確認できた。さらに、加えておくと、TCFDのターゲットセクターは金融である。なぜなら、グリーンファイナンスのコンテクストからやってきているから。さらに機関投資家自身も含まれているようなのだ。この点についてはPRIのアセスメントレポートの質問をみると判明するだろう。